まつげダニ(デモデックス)。生態や眼病を引き起こすメカニズムを正しく理解する。
2020年9月23日
マツエクの不十分なケアが、眼病の原因になってしまうということは皆さんご存知ですね。
ケースのひとつとして、「まつげダニ」の繁殖が挙げられます。「『まつげダニ』って聞いたことはあるけど、詳しいことはわからない…。」という人も多いのではないでしょうか?
「まつげダニ」とは、まつげの根元周辺に生息する顔ダニの一種です。常在菌(じょうざいきん)として多くのヒトの身体に共通してに存在する微生物(細菌)なのですが、
まつげダニが繁殖してしまうと、私たちの目元にどのような悪影響を及ぼすのでしょうか?
今回はまつげダニの生態や眼病を引き起こすメカニズムをご紹介します。
注意!まつげダニ画像掲載の資料はこちら【マイボーム腺炎等 – エクステ障害 3 例&ダニパワー】
目次
健康被害相談の概要
お客様に安心安全なマツエクライフを楽しんでいただくためにも、マツエクの装着が引き金で起こり得る「目のトラブル」についての正確な知識はしっかりと身に付けておきたいですよね。
2015年6月に独立行政法人国民生活センターから「後を絶たない、まつ毛エクステンションの危惧」が発表されました。この通達では、マツエクの施術を受けたことによる健康被害について報告されています。
この報告書によると、マツエクの施術を受けた人のうち、実に25人に1人が目やその周辺などに異変や違和感を経験したと記載されています。
相談の概要
被害者の性別は、不明・無回答以外は全て女性でした。
被害者の年代は、20歳代が38.2%、30歳代が35.7%、40歳代が17.2%で、20~40歳代で90%以上を占めていました。
「目が痛い」、「目が充血した」、「まぶたが腫れた、かぶれた」、「目がかゆい」といった事例が多く見受けられました。
危害程度は「治療1週間未満」が31.4%、「医者にかからず」が35.2%でしたが、「1カ月以上」となる事例も4.0%ありました。
アンケート結果の上位に見られる症状には、「目の痛みや異物感」、「目やまぶたのかゆみ」、「目の充血」、「まぶたの腫れ・湿疹・かぶれ」などがありました。
これらの不快な症状を引き起こす原因の一つに、まつげダニの繁殖が考えられます。その他にもアレルギーやドライアイ、ものもらいなどの眼病など原因はさまざまありますが、今回はまつげダニについて知識を深めていきましょう。
まつげダニとは一体なに?
ニキビダニ:写真提供、筑波大学 医学医療系眼科准教授 加治優一先生 https://kajiyuichi.jimdo.com/
まつげダニは顔ダニの一種で、正式名称をDemodex(デモデックス)といいます。和名では毛嚢虫(もうのうちゅう)や毛包虫(もうほうちゅう)と呼ばれ、毛根や皮脂腺などヒトの皮膚に生息している寄生虫です。現在、ヒトに寄生するデモデックスは2種類が確認されています。
どちらも節足動物門クモ綱ダニ目ケダニ亜目ニキビダニ科に属するダニですが、多少違いがあるようです。では、それぞれの生態をご紹介しましょう。
学名:Demodex folliculorum(デモデックス フォリキュロラム)
体長は0.3~0.4mm、幅0.05mm。
形は一般的に知られるダニとは著しく異なり、細長いイモ虫状であるのが特徴です。生まれてから死ぬまでの全生活過程(生活史)は卵→幼ダニ→前若ダニ→後若ダニ→親ダニの5つの段階からなります。全てのステージでヒトの毛根周辺部に寄生して生活しています。
学名:Demodex brevis(デモデックス ブレビス)
毛根周辺に生息するDemodex folliculorum(デモデックス フォリキュロラム)とは異なり、皮脂腺やマイボーム腺の深部に生息しているのが特徴です。
体長は0.15~0.2mmと短めであることからコニキビダニとも呼ばれます。繁殖活動も皮脂腺やマイボーム腺などで行います。
これらDemodex(デモデックス)は、頬や前額部、鼻、外耳道などの特に皮脂の分泌が盛んな部分でも繁殖しやすい傾向にあります。
肉眼で観察することは難しいですが、約40倍に拡大すると視認することができる程度の大きさです。まつげダニがいるかどうか確認したい場合は、光学顕微鏡や高倍率のルーペなどを用いると良いでしょう。
人体にとって、まつげダニが寄生すること自体はさほど問題ではありません。では、どのような場合に不快症状の引き起こすのでしょうか?
不快症状を引き起こすメカニズム
まつげダニは目元の皮脂などをエサにして生活しています。
通常のクレンジングや洗顔などを行っていれば、まつげダニの影響で目元のトラブルが発生するということはないでしょう。
しかしマツエクを装着していると、マツエクのモチを良くするため意図せずクレンジングなどが不十分な状態が続いてしまうことがありますよね。
目元のトラブルを引き起こす要因の一つとして挙げられるのは、はまつげダニの生息密度の高さなのです!
不衛生な状態=まつげダニのエサが豊富ということを意味します。豊富なエサ場を得たまつげダニは、急速に繁殖する場合があります。
まつげダニが大量繁殖すると、特殊な強いかゆみが発生します。すると、掻いたり、擦ったりしてしまいますよね。
掻く・擦ることが原因でドライアイやアレルギー性結膜炎といった、さらに辛い症状に繋がるケースもあるのです。
掻く・擦るという行動は物理的なエクステの取れやすさにも直結します。取れかかったエクステが角膜を傷つけてしまうこともあり、注意が必要です。
まつげダニの繁殖を防ぐ方法
まつげダニが繁殖するためには大量のエサが必要です。そのためしっかりとしたケアを行い、彼らのエサとなる皮脂やメイク汚れを取り除くことでまつげダニの繁殖の予防することができます。
では、さっそくまつげダニの繁殖を防止するための3つのポイントをご紹介しましょう。
ポイント①メイク落としはマツエクに適したクレンジング剤で行う
皮脂やメイク汚れを取り除くためにクレンジングはかかせません。ただしマツエクに適したクレンジング剤を選びましょう。
市販クレンジング剤の成分を確認して使用するのも良いですが、マツエク専用に作られたクレンジング剤は安心してしっかりと洗浄する事ができるのでおすすめです。
クレンジング選びに迷っているお客様には、おすすめする理由を添えてマツエク専用クレンジング剤を提案してみましょう。
ポイント②目元の洗浄にはアイシャンプーを使う
マツエクを装着している場合、「ゴシゴシ擦るとエクステが取れてしまうのでは?」という思いから、しっかり洗うことができない心理もわかりますよね。
そのため普段のクレンジングや洗顔とは別に、目元でも安心して洗うことができる、マツエク専用のアイシャンプーの使用をおすすめするのが良いでしょう。
アイシャンプーは目元に使いやすいよう、工夫が施されています。ゆっくり慎重に目元の洗浄を行うことができます。
また、メニューにアイシャンプーを入れているサロンにとっては、お勧めするポイントにもなりますよね。
ポイント③メイク道具も清潔に!
目元の洗浄をしっかり行っていても、メイク道具が汚れていては意味がありません。
↓メイク道具の中で汚れが溜まりやすいものは↓
ファンデーションのパフ・スポンジ
メイクブラシ(化粧筆)
アイメイク用チップ など
メイク道具が汚れていることは、メイク道具に繁殖した雑菌などを顔中に塗り広げているようなものです。
さらにメイク時間や仕上がりの美しさにも関わるため、メイク道具のメンテナンスもしっかりと行うことが大切です。
どのアイテムも安価に買い替えることができたり、簡単に洗浄することができたりするものなので、今一度メイク道具の入れ替えにも目を向けてみましょう。
これら3つのポイントをしっかりと押さえ、まつげダニの繁殖を許さない清潔な目元を維持してくださいね!
まつげダニのまとめ
まつげダニについての知識が深まりましたか?まつげダニの繁殖はマツエクを装着して“すぐ”に起こるものではありません。
マツエクが取れてしまうことを恐れて、セルフケアが疎かになってしまうことが原因で起こってしまうのです。
お客様が安心してセルフケアを行うことができるケア用品を提案することは私たちアイリストにできることです。
まつげダニの繁殖防止に繋がるご提案を心がけられるといいですね。