まつげエクステの人工毛に関する基礎知識を再確認する・教科書更新【試験対策に】
2019年10月1日
マーケティング担当 兼 ラグビー担当 の宮本です。
連日感動の RUGBY WORLD CUP JAPAN 2019 こんなに大声を出したのは久々でした。どなたか話相手になってくれる方がおられればぜひご一報ください。
今年11月19日に開催させていただく松風公認エデュケーター試験、マツエク講師の方々を対象とした年に一度のこの試験で、出題される設問を大幅にアップデートいたします。設問は、基本的にマツエクの基礎知識をギュッと詰め込んだ「マツエクの教科書」を元に作成されます。今回は、P28-33の更新情報をお知らせいたします。
目次
まつげエクステは「まつげエクステ専用の人工毛」を使用します
まつげを長く、太く、多く見せ、マスカラやアイラインのような効果を出すのが、まつげエクステ専用人工毛(以下:人工毛)の役割です。まつげエクステを形作る重要な要素であると共に、最も扱いが難しいツールと言えます。人工毛の種類は豊富で、大きく分けて「太さ、長さ、カール、テーパー、色」という5つの基本分類項目があります。これに雑菌の繁殖を抑制する抗菌加工や紫外線カット、剥離強度を増すための表面レーザー加工というような機能性が付与され、人工毛の選択肢は益々広がる傾向にあります。 まつげエクステの知識が乏しい顧客の中には「とにかく沢山つければ目力はアップする!」といった誤った認識に固執するケースもありますが、言われるがままの不適切な対応はトラブルの原因となります。 施術者は、安全確保と衛生管理の徹底を必須前提条件とした上で、顧客の要望、地まつげの健康状態・形状、そして施術者自身が持つプロとしての知識経験から最適なデザインを決定し、常に多くの選択肢の中から適合する人工毛を選ぶことが求められます。
「衣装ケースの中の衣類にカビが生えていた!」ということはありませんか?
人工毛は衣類などと同様に、雑菌やカビが発生することがあります。その原因としては、高温多湿環境での放置や汚れた手指で直接人工毛に触れるなどの保管方法の誤り・衛生管理の不備が考えられます。雑菌やカビは一度付着すると増殖していきます。
黄色ブドウ球菌:
常在菌の一種であるが、非抗菌素材の上では短時間で増殖し、細菌性結膜炎等の眼病リスクを高める原因となる。
大腸菌:
様々な種類があるが、その中でも有害な大腸菌は病原性大腸菌と呼ばれ、一般的には食中毒の原因とされる。
カビ:
菌類の一部、またはそれに似た形状の肉眼で観察できる微生物の集落(コロニー)のことで、劣化や腐敗、臭気を起こし、アレルギーや食中毒の原因となることもある。
注目ポイント
2011年に従来の人工毛の問題点である眼病リスクへの対策として、菌の増殖を抑制する抗菌性能を持った人工毛(クリーンラッシュ®)が開発されました。
人工毛の素材
・ポリブチレンテレフタレート(PBT)
現在、主流となっている人工毛素材です。人工毛は、特殊な機械で一定時間加熱乾燥することでカールをつけていますが、PBTは形状記憶性に長けており、正確な技術で加工すれば長期間変形しにくく、耐薬品性にも優れています。
2011年には、独自の技術開発により開発された高機能素材として、PBTに銀イオンを配合した抗菌機能を持つ人工毛「クリーンラッシュ®」が登場しました。更には、抗菌機能に加えて希少価値の高い本物のシルク(ナノフィブロイン®・シルクフィブロイン)を配合することにより、自然な柔らかさと漆黒の濃さ、マットな質感を実現した人工毛「シルクプロテインアイラッシュ」も登場しました。その他、地まつげとの接着強度を向上させる超精密レーザー加工を施した「グルーヴラッシュ」、紫外線カット率90%以上の「UVラッシュ」、丸断面ではなく扁平断面で軽さと柔らかさを備えた「スマートラッシュ」などの機能性訴求タイプも登場しています。それぞれのメリットを組み合わせた高機能人工毛の開発も進められています。
・ごく稀に市場に流通するその他の人工毛素材 ・ポリエチレンテレフタレート(PET)
ポリエステルと表現されることの多い素材です。「フレアタイプ・ブーケタイプ」と呼ばれる複数本の毛束状人工毛などに使用されることがあります。
・塩化ビニール(PVC)
ヘアエクステやウィッグなどに使用されることが多い素材です。比較的低温で変形しやすいのが特徴です。
・獣毛(動物毛・タンパク質)
「ミンク、セーブル、キツネ、リス」などが微量流通したことがあります。毛によっては申し分のない艶と質感が得られるというメリットはありますが、天然素材のため「長さ、カール、太さ」がバラバラで実際の使用は難しく、動物愛護の観点からも採用されることは滅多にない素材です。
・人毛(髪の毛・タンパク質)
主にヘアエクステに使用される人毛を加工したものです。獣毛や人毛はタンパク質なので、燃やしたときに出る特有の 臭いで素材の判断することが概ね可能です。
注目ポイント
人工毛には様々な商品名がついています。例えば「シルク、セーブル、ミンク」などと呼ばれるものがありますが、通常、これらの素材はすべて「PBT」が用いられています。しかしながら、この商品名を「素材名」と誤認しているサロン、施術者、そして一般消費者は少なからず存在します。
人工毛の種類
・スタンダードシングル 【 1本タイプ/最新の先端加工処理を施した人工毛を含む 】
現在使用されている人工毛は、このスタンダードシングルがほとんどです。毛の先端加工(テーパー加工)によって先端が人毛のように細く、見た目が自然で毛先もやわらかく軽いのが特徴です。製造段階でバラさず毛先を揃えて一列に並べた状態の人工毛をケース内に収めた”シートタイプ”と呼ばれるものの他、1本ずつバラした状態で袋に詰めた”バラタイプ”と呼ばれるものがあります。 装着手技の主流である「1本のまつげに1本の人工毛をつける”1 by 1”」と呼ばれる技術には、このスタンダードシングルを使用します。広く普及している「クリーンラッシュ(抗菌人工毛)」も、全てスタンダードシングルとして作られています。
・複数本束タイプ
人工毛を2本使用し、その2本の毛を根元で固定した「 Yの字(写真左)」のものがあります。その他、2本や3本の毛を根元で固定し先端の長さを段違いにしたものもありましたが、品質面に難があり現在は販売されていません。人工毛が束状になっているタイプでは、複数本を結んで扇状に広げ、弱めのカールがついたインディビジュアルフレア(通称フレア・写真中央)と、インディビジュアルシングル(写真右)などがあります。近年では、知識技術の未熟なサロンの時間短縮低価格メニューなどで使われ、粗雑な施術によりトラブルが増加したことを機に、その利用数は急激に減少しています。
複数本束タイプの誤った使用は様々なトラブルを引き起こす原因となります。 例えば、人工毛に塗布するグルーの量が多いと、隣同士のまつげが同時に固定され、まつげの代謝を妨げることになります。結果としてまつげの減少を引き起こす可能性があります。
まとめ1:トラブルを起こさないために
スタンダードシングルの人工毛を1本の地まつげに1本ずつ装着する「1by1」が現在のまつげエクステの基本です。1本ずつ的確に装着することで自然な仕上がりが得られます。複数本束タイプを使用して施術するサロンは少なくなってきましたが、未だに料金値引きや施術時間短縮のために使用しているサロンも一部見受けられます。スタンダードシングルの主な素材であるPBTと比べると、複数本束タイプは PETや塩ビなどの素材で作られるものが多いため、デザインや質感・装着感が異なり、形状維持期間が短いこともわかっています。また、熱にも弱く、太陽光などで変形するものもあります。プロ向けに流通している人工毛の価格は様々です。品質はもちろん素材や生産国などによって原価が決定されます。ベトナム、中国、インドネシアが製造の大半を占めていますが、日本では人工毛に高機能性を持たせる研究が進んでおり、従来の海外製にはない抗菌性能を持つ人工毛が2011年に登場して以来、様々な新製品の提案が行われています。人工毛の選択は顧客のリピート率にも大きく影響します。持続可能な店舗経営のため、安全を考慮しつつ顧客のニーズに合わせた人工毛を選択し、他店との差別化を意識するようにしましょう。
ボリュームラッシュ施術は、知識・技術と安全性への配慮が強く求められます
複数本の極細人工毛をツイーザーで把持し、ファン(扇状の広がり)を作り、1本の地まつげに装着することをボリュームラッシュ施術と言います。ボリュームラッシュ施術用の極細人工毛としては、太さ0.05mm、0.06mm、0.07mmのタイプが使用されています。「地まつげが一部脱毛していて1by1ではその隙間を埋められない場合」や「部分的に強い生え癖があり1by1ではその隙間が埋められない場合」など、通常の手技では対応できない場合の応用手技として注目されていますが、1本の地まつげへの複数本装着は「まつげの代謝を妨げる」、「グルーの塗布量が多くなるため目元トラブルリスクが高まる・人工毛のリムーブに時間がかかる」、「コームが通らない・美容液やコーティングが塗布しにくくなる」、「1by1に比べてデザインが崩れやすい」などデメリットも多いため、ボリュームラッシュ手技に係る確かな知識・技術を持つ施術者による安全性に配慮した施術であることが前提とされます。※1本の地まつげに1本の人工毛を装着する「1by1」がまつげエクステの基本手技です。
人工毛の特徴
・太さ
人工毛の太さは「0.09・0.1・0.12・0.15・0.18・0.2mm」を主に使用します。地まつげは0.05~0.08mm程度であるため、より自然に見せるには0.09・0.1・0.12mmを使用します。それより太い人工毛は「ボリュームを出したい」場合に活用します。ちなみに、最も多く使用されている太さは0.15mmです。人工毛は太くなるほど硬くなります。装着中に人工毛にかかる負荷を軽減することが難しくなることにより、グルーの接着力が弱まり人工毛が外れやすくなります。”安全性を担保しながら長持ちさせるための技術”を学び、地まつげの状態や顧客が希望するデザイン、持続力などを考慮して最適な太さを選択します。※0.09mm未満の細い人工毛は、製造工程上、太さ・長さ・カール・テーパーのバラつきが生じやすいと共に、形状記憶の保持が難しく、カールが戻りやすい傾向にあります。
・長さ
人工毛の長さは、5~15mmがラインナップされています。主要なサイズは8~12mmで、上まつげ用として9~11mm(アイラインエクステではアイライン部分に5〜7mm)、下まつげ用として6~8mmが最も需要の多いサイズ範囲です。人工毛が長くなれば長くなるほど、装着中に人工毛にかかる負荷を軽減することが難しくなるため持続力が低下します。顧客の望むデザインや持続力によって選択します。※計測方法の違いにより、メーカーごとにサイズ表記が異なる場合があります。
・カール
カールの弱いものから強いものへ順にAJ・J・AC・C・SC・SSCカールなどと呼ばれます。また、Lカールという特殊な形状もあります。顧客の望むデザインだけを重視して選択するのではなく、顧客のまつげの形状や状態も考慮して提案します。 ※顧客のまつげ形状に対して人工毛のカールが強過ぎると接着面が減少し、持続力の低下につながります。尚、SC・SSCなどの強いカールの人工毛を使用する際は、根元浮きに十分ご注意ください。
・テーパー(先端カット形状)
テーパーとは、細長い構造物の径・幅・厚みなどが先細りになっていることであり、人工毛の毛先を地まつげのように細く加工した状態を言います。毛先の5mm前後を細く加工した浅いテーパー人工毛(先太タイプ)を装着すれば濃くボリューム感のある仕上がりとなり、毛先の10mm前後を細く加工した深いテーパー人工毛(先細タイプ)を装着すればより自然で柔らかい印象に仕上がります。同じ太さ表示であっても、テーパーが異なれば仕上がりも異なりますので、それぞれの特性を理解した上でご使用ください。 ※テーパーの深さによって濃さ、柔らかさ・軽さが変化します。(アイラインエクステでは先太タイプ・先細タイプそれぞれのメリットを活かしてアイライン用・アイデザイン用に使い分けます。)
・色
通常は日本でも海外でも「自然に目を大きく見せる」「マスカラやアイラインのような効果」を求めるため、ブラックを使用します。最近では、ブラックより色味の柔らかなブラウンカラーへの関心も高まり、カラー人工毛のご要望も増えてきています。ブラウンの他、パープル、ブルー、グリーン、ピンク、イエローなど様々な色展開があり、定番カラーから派生して微妙に色調の異なるカラーも続々発売され選択肢が広まっていることから、色彩感覚やメイクの知識がある方ほど有効に活用できます。例えば、ブラックの人工毛数本の間にカラー人工毛を1本装着することで重量感を減らし適度な抜け感を演出したり、アイラインエクステの技術を活用して、ヘアカラーやアイブロウ、アイシャドウと色味を調和させることで自在に目の印象を変化させることもできます。有効に活用するためには、顧客がカラーを選択するメリット・デメリットをメニューなどでわかりやすく訴求する必要があります。カラー人工毛の導入は熟練した施術者として手腕を振るう場を設定し、顧客満足度の向上に貢献します。
・機能性
最近では、施術効率を上げる・太く見せる・剥離強度を増す・紫外線をカットするなどの機能性を持たせるために、特殊な形状やテーパー加工・レーザー加工を施したり特殊な成分を配合した人工毛が開発・提供されています。顧客の多様な要望に応えられるよう、適宜、人工毛を揃えておきましょう。
まとめ2:トラブルを起こさないために
人工毛は通常、施術者が人工毛の根元を確実に目視で確認し、人工毛の根元浮きを回避すると共に毛穴や粘膜、眼球との距離を正確に確保するために、地まつげの上または横に装着します。癖の強い地まつげへの装着時には少量を下に装着することもありますが、地まつげの下に装着した場合、人工毛の根元が毛穴や粘膜、眼球に近づきすぎるため、薄目を開けた状態などで装着中の目元を強く擦ると、根元の断面部が毛穴や粘膜、眼球に当たって傷がつく可能性が高まりますので、装着には十分な注意が必要です。また、まぶたの皮膚は薄く刺激に対して敏感なので、「腫れ・痒み・発赤」の原因となることもあります。